kawausonotetugakuのブログ

哲学書や思想書を使って現代社会を分析していきます。

ダニエル・ベル『資本主義の文化的矛盾』を5分で解説

さっそく本題に入りましょう。

ダニエル・ベルが『資本主義の文化的矛盾』で言いたかったことは政治・経済・文化の3つのそれぞれには独自の法則が備わっているんだということです。

『かくして、社会変化には三つの異なった「リズム」があること、この三つの領域には、単純かつ明確な関係はないこと、が明らかになる。技術―経済体制の変化の本質は直線的であることだ。効用性と能率の法則が支配しており、革新、排除、代替について明白な規則を提供しているからだ。より能率的あるいはより生産的な機械やプロセスが、能率的に劣るものにとってかわる。これが進歩の意味のひとつである。しかし、文化においては、リコルソ(recorso)すなわち、人間の実存的苦悩たる関心や疑問への回帰が、常に行われる。……現代文化とは、自己実現と自己完成を達成するために「自己」を表現し作り直すものだ、という中心的な法則である。……形式上は平等と参加を建前とする政治形態』ダニエル・ベル 林雄二郎訳『資本主義の文化的矛盾』講談社学術文庫 昭和60年 P41〜44)

経済の根底に流れている法則は効率であり、文化は自己実現つまり、自己満足を法則としていて政治は平等が法則なわけです。

つまり、政治・経済・文化は本来、それぞれ進む方向性が違うのです。つまり、この三者には必ずねじれが起きるとベルは考えました。

これがダニエル・ベルが『資本主義の文化的矛盾』で展開した最も重要な論点です。

現代日本社会は政治とカネの癒着が問題視されていることから政治が平等という法則から逸脱しつつあり、効率という経済寄りにシフトしているとも考えられますね。

 

参考文献

ダニエル・ベル 林雄二郎 訳『資本主義の文化的矛盾 上』講談社学術文庫 昭和60年

ダニエル・ベル 林雄二郎 訳『資本主義の文化的矛盾 中』講談社学術文庫 1990年

ダニエル・ベル 林雄二郎 訳『資本主義の文化的矛盾 下』講談社学術文庫 1996年